中国の5カ年計画の策定などにあたる国家発展改革委員会の対外経済研究所所長などを務めた張燕生・同
委学術委員会秘書長が29日、東京都内で、全国人民代表大会(全人代=国会)で決定された2020年までの
第13次5カ年計画について講演した。
張氏は、新5カ年計画は、これからの中国の経済社会の構造変化(いわゆる「新常態」への移行)に適応する
ための「最初の調整期間」と位置づけ、鉄鋼や石炭などの産業の過剰生産設備の削減やイノベーションのため
の研究開発投資の促進など、供給面の「サプライサイド改革」に取り組むとする中国政府の方針を説明した。
「新常態」とは、習近平国家主席ら中国指導部が打ち出したもので、同国の経済が、これまでの高度成長から
安定成長に移行しているという認識を示す概念。
一般には、中国の経済成長率の低下(新5カ年計画の目標値は「6.5%以上」に設定)が象徴としてイメージ
されることが多い。だが、張氏は、この「新常態」の下で、研究開発投資の増加▽サービス業、消費の経済への
影響力の増加▽都市と農村、市民間、地域間の収入格差の縮小--など、日本などの西側先進国もたどって
きた、経済社会全体の大きな構造変換が進行しているとの認識を示した。特に、消費については、これまで価
格の安さを重視してきた庶民が、品質のよい商品やサービスを求めるようになっており、この5カ年計画のうち
に、数億人単位で中所得層が増加するとの見方を紹介した。
新5カ年計画は、こうした構造変化への対応。経済成長率の低下などで、海外からは中国の景気悪化に懸念
の声が根強いが、中国政府は、現在の中国の問題は、短期的な需要不足ではなく、生産性の向上など供給面
にあると明確な判断を下している、とした。
そのうえで、1980年代の米レーガン政権のサプライサイド政策が財政赤字などで立ちゆかなくなったと紹
介。中国は、高い貯蓄率や大量の外貨準備高を活用し、短期的な経済の安定を保ちながら、長期的な改革を
進めていくことが大事と強調した。
喫緊の課題となる、重厚長大産業での過剰生産能力については、鉄鋼で1億~1.5億トン、石炭で10億トン
の削減を目指していると説明。これに伴い、180万人の従業員の配置転換が必要になるため、政府は対応策
として1000億元の予算を投入する方針とした。
上海中国語学校漢院顧問が整理した中国通信です。
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