【北京時事】中国税関総署が 15 日発表した 1 月の貿易統計によると、輸出は前年同月比 11.2%減の 1775 億ドル(約 20 兆円)、輸入は 18.8%減の 1142 億ドルと、いずれも 2 桁の大幅な落ち込みとなった。 景気減速が一段と深刻化し、世界経済に悪影響が及ぶ恐れがある。 中国経済を支えてきた輸出は 7 カ月連続の前年割れ。欧州連合(EU)向けが 11.9%減、東南アジア諸国連 合(ASEAN)が 17.9%減となったほか、昨年通年でプラスを確保していた米国は 9.7%減。日本向けは 5.3% 減だった。 輸入も落ち込みが止まらない。輸出不振で原材料輸入が減っていることに加え、長引く内需低迷を背景に、 中国が世界からモノを買う力が衰えているとみられる。 経済の危機的状況が見えない世界の指導者たち、新たな金融 危機の足音が聞こえる 2016.2.16(火) 柯 隆 中国の李克強首相は中国経済はこのまま穏やかな成長が続くと主張しているが・・・(2014 年 12 月 16 日撮影)。(c)AFP/ALEXA STANKOVIC〔AFPBB News〕 中国の李克強首相は、中国経済は穏やかな成長が続 いていると繰 り返す。 日本の安倍総理は、企業業績が改善 され、賃金 も上昇 しており、日本経済はもはやデフレを脱却 したと国会 で豪語する。 アメリカのオバマ大統領は経済 についてほとんど言及 しないが、FRB のイエレン議長が 2015 年暮 れに利上げを実施 し、金融緩和から引締めへの出口政策が取 られた。 こうしてみると、世界主要国の指導者および政策担当者のほとんどは、景気動向 、経済の先行 き についてポジティブに判断 しているようだ。 しかし、世界経済は本当 に良 い方向へ進んでいるのだろうか。新年早々、上海の株価は大暴落 し た。それは単 なる投機筋の空売 りによるものではない。その前 に発表 された 2015 年 12 月の PMI (購買担当者指数 )は予想 よりはるかに悪 い値 だった。中国経済は一段の減速が避 けられないと の見方は、もはや世界金融市場 でコンセンサスになっている。中国の需要低迷 を受けて、原油価 格は 1 バレル=30 ドルを下回 り、26 ドルを記録 した場面 もあった。原油価格の急落は金融市場 を 直撃 し、世界の景気に悪影響 をもたらす。 日本経済は日銀の異次元緩和 により円安が進み、株価 も大 きく上昇 した。この動 きだけをみれば、 アベノミクスは成功 したかのように見 える。しかし、2015 年の年央 に発表 されたアベノミクスの新 3 本の矢はいずれも政策の体 を成 していない。500 兆円の GDP を 5 年 で 600 兆円 に拡大するという が、単 なる絵 に描 いた餅 を見せられただけといえよう。 アメリカでは、製造業のアメリカへの回帰などにより経済は回復軌道 にあるとの見方が現れてい る。だが、新規雇用の増加が予想 を下回 っているため、投資家のマインドに水 を差 している。冷静 に考 えれば、FRB の利上げは時期尚早 と言わざるを得 ない。 つまり、冷静かつ客観的 に判断すれば、世界の指導者 および政策担当者の景気判断は間違 って いる。世界経済は新たな金融危機へと突進 しているのかもしれない。 構造転換が進まない中国経済 中国政府の公式見解は別 として、マーケットウォッチャーとアナリストたちは、中国経済はクラッシ ュする可能性 こそ低 いが減速 を続 けるだろうとの見方が圧倒的 に多 い。 ジョージ・ソロス氏のような、中国 で「股神 」(株式投資の神様 )と祭 り上げられている投資家は、中 国経済がハードランディングするとみている。香港の華人財閥 「長江 」グループの李嘉誠氏 も同 じ見 方 を示 し、中国国内の金融資産 を 2 年前から引 き揚げている。 一部の研究者は中国経済 についてそれほど心配はいらないと主張する。重厚長大の産業はいろ いろな問題 を抱 えているが、ネット通販 などの EC ビジネスは好調 に拡大 しているというのがその理 由 だ。確かに中国 には 6 億人のネット利用人口がいて、若者 を中心 にネット通販 で買 い物 をする傾 向が強 い。しかし、そのしわ寄せで店舗 を構 える店の倒産が増えている。 実は、中国 経済の本当 の問題 はここにない。李 克強首相 が就任 当初から公約 した「構造 転換 」 がほとんど進んでいないことこそが、中 国経済 が持続的 な成長 を続 けられない原因 である。 転 換すべき構 造は 2 つある。まず、投資依存 の経済 から消費依存 の経済 への転換 だ。だが、消 費 はそれほど拡大 していない。もう 1 つの構造 転換は、低付 加価値 の経済 から中付加価 値の経 済 へ、さらに高付加価値 の経済 へ、という産業 構造の高 度化 である。しかし、カギとなるイノベーシ ョンは起 きず、産 業構造 の高度化 は果 たせていない。 何 よりも産業構造の高度化 を妨げているのは、市場 を独占支配する国有企業の存在 である。競争 が妨げられている市場 ではイノベーションは起 こりにくい。中国では知的財産権が十分 に保護 され ていないのも問題 である。思 い切 った改革 を断行 しなければ、中国経済はこのまま慢性的 な停滞 に 陥 るだろう。 アベノミクスは挫折する可能性が大 次 に日本経済の先行 きはどうか。 アベノミクスの 1 本目の矢 、異次元の金融緩和は一定の成功 を収めたといってよい。しかし、異次 元 であるからこそ長期 にわたって続 けるべきではない。日銀は出口政策 を考 えるべきだった。にもか かわらず、実体経済が安定 しているなかで日銀は唐突 にマイナス金利 を導入 した。それによって市 場は大混乱 してしまった。 マイナス金利はいわば劇薬 である。日本経済が非常事態 にあるならやむを得 ないが、この状況 で マイナス金利 を導入 した日銀の舵取 りには問題がある。中央銀行は独立性 を確保することが重要 だが、今の日銀の政策の取 り方 をみると、独立性は完全 に失われてしまっている。 景気回復のためになりふり構わない日銀の舵取 りをみると、風車 に立 ち向かうドン・キホーテのよ うにもみえる。黒田総裁はやれることを何 でもやると豪語 しているが、今は日銀の出番ではない。 おそらく安倍総理の頭の中は、景気 を良 くすることよりも、憲法改正が最終的 なゴールなのだろ う。景気 を良 くしなければ、憲法改正 に支障が出 るというわけだ。しかし、景気回復 に向 けて重要 な 役割 を果 たしていた甘利大臣は辞任 を余儀 なくされ、「景気回復 → 憲法改正 」のシナリオは崩れ てしまった。官邸はさらなる金融緩和 を日銀 に期待 しているわけだが、おそらくこのままでは、2017 年の消費税引 き上げは実施 できないだろう。 失われたアメリカのリーダーシップ アメリカは 4 年 に一度の大統領選 という政治 ショーの季節 に突入 した。 今回の大統領選は、アメリカの国家像がどの方向へ進むかという分かれ道 になる。アメリカでは経 済格差が大 きな問題になっている。それに対 して、自由競争 を尊重する保守的 な道 を歩むのか、民 主社会主義的 な道 を歩むのか、さもなければ第三の道 を模索するのかということだ。また、テロにい かに打 ち勝 つかも、大統領選の大 きな争点 である。 世界はテロ問題 、難民問題 、国際秩序の乱れ、国連の機能低下 といったさまざまな問題 を抱 え、 まさに混沌 としている。北朝鮮が核実験 しようが、ミサイルを発射 しようが、国際社会はなすすべは ない。 乱世 においては国際協調が求められているが、アメリカのリーダーシップ低下 によって国際協調 も 取れていない。 当初 、アメリカが TPP の拡充 を主導することで新 たな市場が構築 され、主要国の経済は一気 に 活性化すると期待 されていた。しかし、TPP の締結から新 たな市場の構築 まではかなり長 い時間 を 要する。また、欧州の景気後退の長期化はアメリカにとって予想外の展開 であった。 新 たな経済危機 に突入 してしまう危険性が日増 しに大 きくなっていると言わざるを得ない。 元売り投機筋と対決=「弾薬」を駆使中国人民銀総裁時事通信 2 月 13 日(土) 【北京時事】中国人民銀行(中央銀行)の周小川総裁は 13 日までに同国誌「財新週刊」(電子版)のインタビュ ーに応じ、海外のヘッジファンドなどが人民元売りを仕掛けていることについて「投機筋には市場を主導させな い」と述べ、対決姿勢を鮮明にした。 中国の景気減速で元安圧力は根強く、人民銀は外貨準備を取り崩して元買い・ドル売りの市場介入を続けて いる。中国の外貨準備は依然世界一を誇るが、介入で急減しているため、周総裁は「弾薬(外貨準備)を有効 活用する」必要性を強調した。
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